屋形船 ―季節ごとの楽しみ方

アッチューマ 屋形船 ―季節ごとの楽しみ方

 今にいたる屋形船のルーツ・江戸時代においては、屋形船の原型は小型の船に4本柱に屋根、サイドウォールはすだれという風通しのよいスタイルでした。そのため、夏場の隅田川に船を浮かべて涼を楽しむのが、江戸っ子にとっての「粋」というものでした。つまり屋形船のハイシーズンは夏だったわけです。江戸時代は「ミニ氷河期」だったとも言われますし、冬は寒かったでしょうね。
 しかし現代は、屋形船も冷暖房エアコン完備。四季を通じて舟遊びを楽しめます。
 言うまでもなく日本人には鋭敏な季節感があり、それが豊かな文化をはぐくんできました。ここでは季節ごとの屋形船の楽しみ方を紹介します。
 
  • 「春はあけぼの」
まずは春です。心弾む季節に、屋形船は最高です。
そして春といえばサクラ。「花」といえばサクラです。
上野公園や隅田公園といったサクラの名所で、場所取りをしてのお花見もいいものですが、屋形船から見る花見もまた、味わい深く、そして楽しいものです。船内で食事を楽しみながらの花見もいいですし、屋上スカイデッキから眺める花見も格別。昼間だけではなく、夜桜もいいですよ。サクラの木のすぐ下で楽しむのもいいですが、少し離れて、船上から見上げるアングルで見るサクラもアリです。
なによりも、予約さえしてしまえば乗れますので、場所取りをしなくてもいいというところがとても大きなメリットです。
 
おすすめのコースは、なんと言っても隅田川沿いです。特に言問橋周辺の隅田公園。屋形船からであれば、隅田公園の浅草側も牛嶋神社側も、両岸のサクラが楽しめます。牛嶋神社方向をふりさけ見れば、どーんと東京スカイツリーがそびえ立ちます。江戸の昔と平成の東京が共存する風景です。言問橋から少しさかのぼると、歩行者専用橋である、その名も「桜橋」があります。このあたりは、サクラの季節は本当にきれいです。
このあたりのスポットは夜も最高です。サクラ並木はライトアップされますし、東京スカイツリーも色とりどりに妖しく光ります。
 
  • 「夏は夜」
続いて、夏です。上記のように、屋形船は本来夏の風物詩でした。実際、今でも夏場が船宿の繁忙期、かき入れ時です。
夏は、屋形船で川や海に出るだけで気持ちのいいものです。ですから、昔ながらの楽しみ方である「暑気払い」だけでも十分に価値があります。旬の食材をふんだんに使った料理も楽しめます。一年中食べられる食材でも、本来の旬は夏というものもけっこう多いのです。魚ではキスやアナゴ、ハモ、野菜だとナス、オクラ、ゴーヤなどです。旬の食材は健康効果も高くなります。ぜひ、お楽しみを。
 
さてしかし、夏はなんと言っても花火でしょう。8月開催だと暦の上では秋なのですが、細かいことは置いておきましてやっぱり花火です。
お花見と同様、場所取りしなくてもいいという大きなメリットがあります。陸上でもルーフトップにある飲食店などを予約すれば、良いロケーションが確保できますが、数や収容人数には限りがあります。その点、屋形船の場合は、打ち上げ地点近くまで接近することが可能です。数多くの屋形船が出ることにはなりますが、一隻一隻の船には定員がありますので、屋上展望デッキではゆったりと花火を眺めることができます。河川敷や土手の上、または橋の上だと、人がひしめき合ってとてもゆったりとは見ていられません。橋の上で立ち止まると、警察官に叱られることにもなります。その点、屋形船なら余裕です。
さらに、屋形船から見る花火は、その見え方がまた格別です。ほとんど真上近くに、お腹に響くような轟音とともに花火が花開き、火花が流星のように降り注ぐ感覚です。迫力がちがいます。
「花火を見るなら屋形船に限る」
一度でも経験すれば、皆さんそのように確信なさるはずです。
 
  • 「秋は夕暮れ」
さて秋です。何をするにもいい季節ですが、川面を渡る風はなんとも言えずさわやかです。気持ちよく舟遊びを楽しむことができます。
「食欲の秋」というくらいですから、もちろんこの季節もおおいに料理が楽しめます。旬の食材は、魚ではサンマ、サバ、野菜だと秋ナス、さつまいも、ぎんなん、それから蕎麦も秋が旬ですし、いろいろなキノコ類も秋にもっともおいしくなります。
 
また、秋は景色の風情もひとしおです。『枕草子』は「秋は夕暮れ」と言いますが、屋形船から眺める東京湾の夕暮れは、たいへん味わい深いものがあります。まさに「絵になる」一大パノラマです。
コースによっては紅葉も楽しめます。やや小さな船でしか入れませんが、目黒川沿いの紅葉を水面から眺めるのも良いものです。水面に落ちて流れる紅葉もいいですね。「からくれないに水くくる」ところまではいきませんが。
それから、秋はお月見もあります。中秋の名月を屋上展望デッキから眺めながら、お団子を食べたりお酒をたしなんだり。風流な舟遊びと言えるでしょう。
 
春もそうですが、秋は屋上展望デッキが過ごしやすくなります。晩秋ともなればかなり肌寒くもなりますが、それまではさわやかな秋風を感じながら、デッキからの眺めを楽しめます。隅田川にかかる個性豊かな橋を下から眺めるのもいいですし、沿岸のこれまた個性的な建物の数々を愛でるのもいいものです。
 
  • 「冬はつとめて」
最後に冬です。一年の締めくくりでもあり、新しい年の始まりでもある季節になります。屋形船を運航する船宿業界にとっては閑散期です。それだけに、比較的予約が取りやすい季節です。夏場だと「25人以上でないと船を出せない」などと言われて予約がとれない船宿でも、冬場なら15人くらいでも予約がとれることがあります。少人数の「乗り合い」も、選択肢が多めになってきます。そういった点では、むしろ冬は「屋形船おすすめの季節」でもあります。
 
この季節の屋形船の利用目的は、やはり忘年会・新年会がメインでしょう。年度末も近づく頃合ですから、人が入れ替わり、歓迎会・送別会もあります。
冬場ですと、そうした宴会には鍋料理を中心としたコースがしばしば提供されます。身体が温まりますね。
冬は、多くの魚介類が旬を迎えます。あんこう、甘エビ、カキ、カワハギ、金目鯛、銀ダラ、すっぽん、ニシン、タイ、カレイ、ヒラメなど。こういった魚の鍋はこの季節ならではです。
野菜では、大根、ゆず、金時にんじん、聖護院かぶ、小松菜、白菜、冬キャベツ、ブロッコリー、ほうれん草が旬です。低温期にゆっくりじっくり育てられた野菜は、春夏の3倍ものビタミンを含むようになり、味だけでなく栄養・健康効果の面でも最高です。
こうした食材を鍋で楽しめば、だしに溶け出した栄養まで残らずいただくことができます。
 
一方、景色の面では夜景がおすすめです。東京の冬は空気が乾燥するので、外の風景は遠くまでクリアに見えます。街の灯り、ネオンサインや、さまざまなランドマークのライトアップがいっそう引き立って見えます。屋上の展望デッキから眺めるのはちょっと寒いのですが、鍋で身体をあたためて、しっかりあたたかい服装を着込んでいただけば、なんとかだいじょうぶでしょう。
 
◎屋形船 ―季節ごとの楽しみ方
東京には四季があります。屋形船は、四季を空気に感じながら食事を楽しみ、折々の風景を楽しむための最高の方法です。ぜひ、それぞれの季節にご利用ください。一度体験すればハマること間違いなしです。


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